雇用の観点から見た都市船整備員

都市船整備員。
これらの人員は、都市船の開発時、大規模に雇用した人々か呼びかけられて集められる事になった。

元々都市船開発に用いた技術は、海底都市やファームで用いられている物と大部分が共通している。
ノウハウを継承しようと言うのは当然の発想である。

しかし、それらの施設と都市船の整備員とで大きく異なることがある。
必要とされる、数である。

都市船は当時の紅葉国の全住民をそっくりそのまま収容できる大規模さである。
その巨大さは、道楽者の放蕩息子が次々に金と酒をせびるがごとく、莫大な整備能力を要求した。
加えて、安全性の観点より常にある程度の規模の整備員を確保しておく必要があるため、
公共事業として大規模な雇用が見込める一方で、
通常ありえないほどの整備グループを組織する必要があった。

その中核には都市船開発にも関わった技術屋を据えるとしても、単純に数がいる。
そのためのマニュアル整備と指揮系統の設計こそ
先の臨時裁定システムをモデルケースに慎重に行われたが、
雇用数そのものは、話が別である。

が、幸というべきか不幸と言うべきか。人は集まった。

紅葉国は長年観光主軸の経済構造だったが、
長らく続く不況で国内には仕事を求める者が多かったのである。
大規模整備が行われる度に彼らを雇用し、整備をすることで、動員数は確保されることになる。
これは国に対してかなりの出費を強いたが、
もとよりベビーラッシュを前に子供の住処が無いのは論外である。
大抵のことはいいんじゃないと認める藩王も、こと子供に関しては丁重に保護した。
大抵の国でもそうであるように、紅葉国でもまた、子供以上に優先されることはそうそう無い。
医者から転向したシステム担当整備員(ソフトテクノ)
一方、都市船整備員には多くの医者も関わっている。
これは大規模雇用と大規模な仕事の中にあって、
専門のメディカルスタッフも必要であると検討されたためである。
これは職場環境の保持を目的としており、
夢の剣事件後の事例にも倣って心理面での配慮と、
労働環境の悪化を防止するための肉体面での配慮として
医師または医療関係者が配置されることになった。
もともと医療国であり、古くから病院を持つ紅葉国には、これらの人材は豊富にあった。
これを受けて、都市船整備員は医者が兼任することも少なくなかった。


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