序文

 宰相府の悩み。それは慢性的な整備効率の悪さと、熟練整備士の不足である。

 宰相府は機体の独自開発を行う他、各国から機体、あるいは設計図を買い上げて運用しているが、これらの機体は開発国が多岐にわたるため、共通機として近年開発された機体を除くと部品の互換性に乏しいのが欠点であった。また系列機、例えばフェイク2とフェイク3などでも設計思想の違いから部品の互換性が低く、補充部品は常に倉庫と予算を圧迫した。技術系統も様々なものがあったために統一された整備方法論というものも存在せず、整備士たちは機種刷新のたびに専門教育を受け直さねばならなかった。これはOJTで補うにしても甚だ効率が悪いものであった。

 また、戦訓の不足から設計レベルで戦場整備に対する配慮が足りない機体も多く、これまた整備士泣かせであった。歩行型I=Dの足回りに関してこれは顕著であり、構造が比較的単純なダンボール系はまだ良いとしてもエチオピアやミラーコートといった大型I=Dなどは大規模な作業を要した。

 これらの問題は長期間をかけて熟成されたものであり、従来の方法論……整備士の教育強化や調達の効率化といった程度では対応し難いものであった。

 事ここに至り、生産・整備性を追求した新型共通機『A101ダルメシアン』の採用を契機として、既存の機体に関しても「整備力の向上が難しいのなら、機体側を整備しやすくしよう」という逆転の発想によって、機体・整備士両面からの整備体制刷新が決定されたのである。
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