雷球の記憶

初めてそれを見たのは、偵察に出た広島の地でした。
7000ものチルを相手にすることがわかったとき、
広島の山岳騎兵たち…というかクイーン…と連絡をとってくれて。
合間には
「モテてどうするんだ?」
「女なんか、一人で充分だ」
なんて話す言葉が聞こえてきたけど。
「嫉妬させて悲しく思わせて、それで満足なのか?」
「俺の趣味じゃないね」
ここは戦場のはずなんだけどな、と笑ってしまい。
同時に、この人に好きになってもらえたらな、と思ってました。
以前からファンではあったけれど
ほんとに意識しはじめた瞬間。

そして戦闘。
山岳騎兵たちとの奇襲挟撃で、全てのチルを相手取るという状況になって。
指揮をとりながら震えそうになる中
夜を照らす光を操るあなたがいました。
シューティングゲームの画面では、何度も見ていたし操っていた雷球。
その実物が、目の前で輝き、舞い、そしてチルを倒す。
戦闘は気を抜くわけにはいかなかったけれど、幸い順調で。
おかげで少しの間は光に目を奪われるだけの余裕もあったのをいいことに
綺麗だな、と思いながら見つめていました。

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次に見たのは、広島偵察から1年以上経過した後。
狙撃事件のただ中のFEGでした。
玄ノ丈さんに会いにいったはずなのに、いるのは亜細亜ちゃんにカガチ。
銃声の中、いったん避難しているそのときに、光が、稲妻が見えました。
あれは確かに、一度みたきりだったあなたの雷球。
以前見たときは夜だったので、とにかく眩い光という印象だったけれど
昼間でも、それは辺りを強く照らしていました。
おかげで居場所の見当はついたものの、怯えている亜細亜ちゃんを置いていくことはためらわれ。
やがてあなたの声が聞こえて、いてもたってもいられずに外に飛び出しました。
けっきょく狙撃手に狙われて身動きとれなくなってしまって。
それでもなんとか接近しようとして。

けっきょくミュンヒハウゼンさんに助けてもらって、あなたの方からやってきてくれましたね。
安心したというか、気が抜けたというか。
でも、挨拶代わりに
「胸に穴開いてるね」
はないと思うんです。
ほんと、心配してたんだから……。
おまじないは効いたようで、よかったです。

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そして三度目は、レンジャー連邦。
玄ノ丈さんは、一度死亡して、道真公の反魂の術で存在している状況でした。
何も知らずに会いにいって。
幸せな内容だけ話そうと準備していって。
あなたの姿を見て無邪気に喜んでしまっていた自分。
初めてきいた拒否の言葉、突き放す態度。
なのに、冷たい言葉を受け止める私よりもあなたの方がずっと辛そうだった。
忘れているはずはない。
何も手段がないはずはない。
ならば私にできることは何だろう、必死で考えながら。
ただあなたが目の前で消えてしまわないよう、抱きしめて、言葉を紡いでいました。

やがてこの場所にも敵が出てきて。
最初は私を守ろうとして突き飛ばしたのに気づかなかったけど。
わかってしまうと、消えないよう善処するという言葉を胸に、離れることしかできなかった。
あなたの放つ雷球の光が、このときは悲しかった。
私と違って最後まで共にいられる相棒。
雲が降り、ログアウトしながら最後まで見えていたのは
あなたの姿ではなく、あなたの放つ光でした。

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