スプリンター試験

紅葉国のある島。
密集した木々や山が阻み、その向こうに存在するはず牧歌的農村風景を覆い隠している場所の少し空いた一画。
いつもならカエデネコが集まっているその場所に再びやってくることとなった。

キャットバスケットの横で指導官が試験内容の説明をしている。俺はコクピットで待機中だ。
今日はスプリンター予備部隊の試験である。つまり後輩になる若いのがこの中にいるってことだ。
試験内容は"いつもの"。
要するに誰にも気づかれず、向こうの農村の農家で飼われている水牛に家主が起きて来る前に飼葉を与える、である。
無論、同僚が彼方此方に張っていたり、トラップなども仕掛けられているのでそう簡単なことではない。
しかも年々難易度が上がってきているという噂だ。
4人とも緊張した様子だが…まぁ、訓練を見た限りでは7割受かるかと言ったところか。

説明が終わった後のインターバル、一人がコクピットのところまでやってきた。聞くとアドバイスが欲しいらしい。
ふと思い出して、”不用意に稜線に身を乗り出すなよ。後最後の詰めを誤るな”と言ってやった。
ありがとうございます、と言って去っていく後姿にニヤリとしながら手を振った。
多分、今のは駄目だ。緊張しすぎて歩兵銃がきちんと括りつけられてなかった。
さっきのアドバイスは早かったか。

髪を掻きつつこれを書いているうちに指導官が戻ってきた。
残燃料と天候も大丈夫。さて、もう一仕事しますか。

―――ベテランのゲリラの日記より

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