ステラ・マリス

はじめに-または朝霧のぼやき-

「何で宇宙なんですか」
「宇宙いいじゃない」
意味が分かりませんと言ったらキックが飛んできそうだった。
ご機嫌ですねと言ったらどうなっただろう。
朝霧は二秒ほど考えて、結論ごと思考のゴミ箱に投棄した。
世の中には考えてもしょうもない事ってあるんだなあと思った。
「遠い目してますね」
現実に引っ張り戻される。
焦点座標が狂い始めた目玉を叱咤して、ぐいっと視界を引き延ばす。
ルウシィさんの娘なのに可愛いんだよなあなどとキックが飛んできそうな印象を抱いた相手はマユミと言う。
この国の摂政である。

さて。今更ながら紅葉国では男性陣の肩身は狭い。
藩王に摂政によくわからない幸運に憑かれている猫の人。
華々しい肩書きはすべて女性陣に集中している。
いや、別に神室さんの影が薄いって言いたいわけではなくて、と内心で言い訳をこぼす。
やめよう。この話題は。心が痛くなるだけだ。

現在我々は、かつてとは比べ物にならぬ面積を得た摂政の執務室にいる。
他にも摂政神室氏、幸運の猫の人(あ、混ざった)日向美弥嬢が集まっている。
テーブルには美弥嬢が用意したお菓子の類が並べられていて、各自で摘みながら会議中という体である。

「まあ藩王ですしねー」
答えになってねえよと裏拳をたたき込みたくなる感想をこぼす神室。
どうでもいいがどこの国でもこの台詞は聞く気がする。
今度兄に調査してもらおう。暇あるかなああの人。
最近小説書いたりしてるらしいけど、いまいち近況が不明なんだよなあ。


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