―目覚め〜朝―

紅葉国は南国で、だから朝は涼しいとは言っても、明るくなる頃にはすっかり目が覚めます。
海底都市は環境が外と同じなので、朝になれば明るくなり、昼になれば熱くなり、夜になれば涼しくなります。
だから、たいていの人は朝日が昇ってしばらくすると起き出します。春名さんも、そんな一人でした。

で、寝癖がどっかんだったことに慌てたりしつつ。ひとまず落ち着くと、朝食です。
オレンジ、パイナップル、キウイ、バナナ。冷蔵庫で冷やされたフルーツが国での一般的な食事になります。
朝は抜く人もいますが、これはこれで、朝の食事も立派な楽しみなのでした。
朝食 朝食 どれから食べようかな

――今日は休日。いつもより一時間の朝寝坊に幸せをかみしめつつ、まずはちょっとした買い出しに。

―朝〜昼―

市場はすごい人だかり。
立ち並ぶ店々、道に張り出した屋台、それらを取り囲む人々の隙間を縫うようにして道が延びています。
とはいっても、海底都市はどこもこんな様子で。賑やかとも騒がしいともつかない場所を歩いて行きます。
都市船の開発も着手されたそうで、そうなるとのこの騒がしさが懐かしくなる日が来たりする……のかもしれません。

さて。そんな中。市場でちょっと買い物です。
午後のために、まずはフルーツ、カレーの材料。フルーツは持っていく用と、間食用です。
どちらも慣れた行きつけの店で。顔見知りの店員から買いました。
―――誤解を招かないように説明すると、これはその、食欲が有り余っているというわけではなく。
紅葉国は暑い南国で、だから一度にたくさん食べるのではなくて、水分補給もかねてちょくちょく食べるのです。
だからフルーツも充実していて、果物好きはのどが渇くと代わる代わるいろんなフルーツを食べたりします。
だ・か・ら。間食といってもそういう意味ではありません。
なのでこのフルーツのシャーベットを食べてしまうのも普通なのです。
買い出しして疲れましたので。

こほん。それはともかく。
買い物が何とか終わって、ふと先を見てみれば、イカ焼きの屋台、ではなく。花屋がありました。
そういえば。花を買っていっても喜んでくれるかな、と思いつつ。
そこでちょっと綺麗な花束があったので、なんとなく、衝動買いしてしまいました。

ちょっと手荷物の量を考えるべきだったかもしれません。
ここから孤児院までの道のりは、何しろ、そこそこあるのですから。

―昼〜昼下がり―

さて、行き先は孤児院です。が、今は海底都市になります。避難措置が執られているからのようです。
大神殿区画に行けば、ぎゅうぎゅう詰めの市場からも一段落、少しだけ開けた土地に出ます。
そこには避難してきた孤児達がいて、彼らが木陰で地面にぺたんと座っていたところ、
駄目だーといってトランプをばらまいた子が春名さんに気づきました。
すっげぇ荷物、といいながら近づいていって、みんなで荷物を運んで。
「今日は何すんの?」
という問いに、
「今日はなんとカレーなんですよ」
と答えたり。
おおーとあがる喚声の中、食材を冷蔵庫に、花を花瓶にさして神殿区画の子供達の住む場所に置くと、
みんなで遊びに行きました。
「なあな。今日はカレーの肉な?肉!」
「え、ええっ!?」
「あ。じゃあ私じゃがいも!」
「おま、いもばっかじゃん」
「うっさい!」
「ええー。ま、まさかまたー!?」
慌てた頃にはすでに遅く。子供達に引っ張られていって木陰に座り込むと、みんなでトランプをめくり始めました。
――勝負は真剣に。今日の夕食の材料をかけての真剣勝負。
子供達はにっこにこ。かもとねぎと鍋が一緒くたとばかりに超笑顔。
「……ふ、フルーツは渡しませんっ!」
言って、カードを引きます。
カード…が、まずい感じ? なにやら、カードがまずい感じです

喚声とともに夕方まで、しゃかりきになって遊んでいると、瞬きのように時間が過ぎて。
きっと明日、疲れているんだろうなぁ、と思いつつも。どうしても、笑みを隠せなくなってしまいました。

―夕方〜夜―

それはそれとして。夕食です。
みんなでカレー作り。皮をむいたり野菜を切ったり肉をいれたり御飯を炊いたり。
カレー作成中 カレー作成中の図
市場の喧噪に勝るとも劣らない賑やかさの中、みんなで作ったカレーは食べきれないほどありました。
……重たかったからなぁ、なんて思いつつ。自分のスープと御飯だけカレーを見つめてしょんもりします。
でも。テーブルを見回せば、きらきらとした笑顔。
―――ま、いいか。

「い、いただきまーす!」

でも、どこか悔しさをぬぐえない声でそういうと。
みんな、いただきまーすと言って、こっちに近づいてきました。

あれ?

と思っている内に、みんなのお皿から次々に。じゃがいも、にんじん、お肉と集まってきます。
「え、ええ?」
「あ、ずりー。肉は僕があげるんだ!」
「じゃがいもあげるねー」
「じゃあ僕はにんじん」
「ぬ、ぬけめねー!」
そしていつの間にか。食べきれるのかしらと心配になるほどいっぱいに。
「ねーちゃん、いつもありがとな!」
「休みの日以外も来ればいいのに」
「無理言っちゃめー」
「めー」
けたけた笑いながら、食卓は作る時よりもずっと賑やかに。
「ありがとうございます!」
そう言って、みんなで食べた食事はとても美味しいものでした。

荷物を運ぶのが大変だったり。トランプで負けたりもしたけれど。
美味しなカレーも、みんなと遊んで楽しんだりすることもあって。
きっと。こういった事が幸せなんだな、と。
――――その日の終わりに。
カレーの味を思い出しながら、そう思いました。
笑顔

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