全容

都市船の設計は「拡張性限界の打破」と「国内全体の街作り」をテーマに行われた。
基本構造としては、マスターシップとなる都市船を中核とした上で、
ファームタイプの施設などですでに使用されているシリンダー型・三層構造の施設を
逐次増設できるように設計された。
以後、都市船とは、これら増設施設(スレーブシップ)も含めた全体のことをさして呼ぶ。

これら都市船は、特に生活環境の改善に重きが置かれている。
ファームで培われた自然の移植技術を用いて、船内は外部に近い南国の環境を再現されている。
空気清浄も、新たに開発されたふうたくん2によって循環されている。

都市船の環境構築は、単独としての独立よりは、
連結したマスター・スレーブ全シップを連結させた系全体でのバランスが考慮された。
後のスレーブの増設にあたっても、全体のバランスを保つため、
都市船全体としてのバランスの上で居住区や環境区が増設される運びとなった。

他、潜水艦での出入りに関しては、マスターシップの側面部にいくつものポートを配置した上で、
スレーブシップには二つから四つのポートが用意された。
スレーブのポート数は、人口や物資の流動から鑑みて、基本的に四つのポートが作られた上で
稼働数を調整された。
また、マスターの発着ポートは正規の側面部の他、背面、底面、正面などの方向にも
緊急の発着用ポートが設けられた。

都市船
都市船の開発は以前より紅葉国に存在していた造船所を利用して行う事になった。
ここでオブジェクトごとに開発された部品が海に投下、海中にて接続される事になる。
海中での作業には無数の潜水艦が
――それこそ潜水艦の群れと呼ばれるほどの数が――導入された。

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マスターシップ

巨大海亀。
潜水艇から初めてこの都市船を見たときに、かなりの人が口走る言葉である。

六角形の硬化アーマーユニットで構成された天井に加え、四方の円柱型の塔
――都市船管制塔、RBやI=Dが配備できる防衛塔――
で構成されたこの建造物群は、確かに海亀のように見えることだろう。

マスターシップは全長17km、全幅11.5km(接続ユニット、ポートユニット含む)というサイズである。
資料に写っている潜水艦は、作業用の巨大潜水艦で200mクラスのものであり
ここからも分かる通り、かなりの巨大構造物となっている。
海底都市で足りないとされていた居住区画は2層+αとなっており、
総合的には海底都市よりもかなり広くなっている。
これでも足りない場合はスレーブシップを次々と接続していく事になる。
そのスレーブシップは、これまでの拡張性の問題を解決するために
シリンダー型・三層構造の施設を随時接続できるようになっている。
この接続方法は海底工場群でのドームで用いられてきた方式で、安定性は実証されている。
五階層からなりたっており、一階層につき高さ150mと十分な大きさが確保されているため
比較的閉塞感を受けないようになっている。
一定区間ごとに上層から下層までつながるエスカレータが設置され、階層を行き来できる。

都市船は、マスタシップ、スレーブシップともに、
それ自体が一つの生態系を維持しうるコロニー船のようなものである。
環境はほぼ海底都市と同じく、天井スクリーン等可能な限り住民に対する配慮を行っている。
空気清浄機は海底都市で用いられているものをさらに改良したふうたくん2であり、
ランダムに風が吹く仕様となっている。
また、隔壁やスプリンクラー、及び排水システム等海底都市にある機能は、
システム含めすべて完備している。
ポートと一体化している停留場なども海底都市の技術を応用したものが使われている。
ただし、こちらは開発中の超大型輸送用潜水艦も停泊できるように大型化しており、
このためにポートは外側に大きく張り出している。
都市船を維持するエネルギーは海流発電と地上に接続しているソーラーフロート、
および対消滅機関である。

以下、階層ごとの主な機能を記載する。

最下層:都市船機関部及び水流による発電区画や機関部、及び工業品自動生産区画。
第二層:上層の都市の維持機能、及び倉庫。輸送物資用の潜水艦ポートからの接続口も存在する。
    また水耕栽培などもここで行っている。
第三層:居住区・商業区。区画整備及び木々も多く含む。海底都市の中層と同様の設計。
    潜水艦ポートからの接続口がある。
第四層:政庁及び居住区・商業区。第三・四層はこれまでの教訓を生かし、広めに設計してある。
最上層:自然庭園と農業生産地。外界の自然を持ち込んできており、動物も保有。

これらに加えて、都市船後部には接続・エンジンユニットが存在している。
この部位にスレーブシップを接続できるようになっており、
都市船の各階層に相当する場所にロビーと直通エレベーターが設置されている。
また、潜水艦ポートの片方もこちらに接続してあるため、人の交流が多い場所でもある。
エンジンについては後述する。

海底都市で問題となった防御に対しても、ある程度の対策を行っている。
隔壁はもちろんであるが、最も変わったのは上面・アーマーシールドの存在である。
六角形のプレートが組み合わさっており、これが三重に重ねられている。
また、一番外側のアーマーには内部天井スクリーンと同じ機構が備わっており、
大量の電力を使うものの、周りの地形の色に変化させることが可能となっている。
これは、海底都市での利点であった航空偵察では発見されないというものを活かした形となる。

さて防御も大切では、都市船の観光資源としての側面も見逃すことはできない。
折角の水中である。
天井がいつも覆われているのは如何なものか、という意見が設計段階で出たのである。
さて、苦心した結果、アーマーシールドを稼働できるようにすることに決定した。
通常時には上に開くことができ、
内部からは透過ドームを通じて外を見ることが出来るようになった。
緊急時には閉じることにより、防衛力を上げるというものになった。

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スレーブシップ

スレーブシップ。
全長4km、全幅1.7kmと規格化された、マスターシップに接続する様々な特性をもった都市付随船である。
なお、船というからにはそれ自体で航行能力を持っている。
これらには沈没船というあだ名のあった"めーぷるシーランド"の技術が用いられており、
移動に充分用いることができる機関が完成したために実現した。
この機関とはセレスタイン型シールドシップの機関を解析することによって得られたものである。
スレーブシップは実質一つ一つがファームであり、種類毎に一つのプラントとして機能している。
プラントの目的ごとにスレーブシップの中身は異なり、
通常の居住区、自然環境再現型、開発地区、研究地区もあれば、
他国の生活環境も考慮してカマキリ用、北国用の生活空間も用意する事ができる。
これらの様々な系を総合し、常にやりとりを行うことで、
スレーブシップは相互に生活環境を補完している。
基本的に一隻ごとに専用のシステムとして成立しているので、
マスターシップを中心に船団を組み、
拡張システムとしてスレーブシップを配置する運用となっている。
もしもマスターシップに何らかの問題が出た場合も、
スレーブシップはスレーブシップ間で連携を取ることで生活環境としての系を保存できる。
スレーブシップが一定数を割った場合は、浮上しての生活をすることになる。
これらのプラントは以下の種類に分類される。

・居住型スレーブシップ:
 海底ドームをそのまま小型化したような形である。
 居住型の名の通り主に住むための船であり、
 地上の土や草木、動物なども十分に運び込まれている。
 診療所や食事処等もそろっており、日常生活ならこの内部で充分過ごせるようになっている。
 居住用スレーブシップの構造は3層であり、以下のようになっている。
  上層:居住区画
  中層:工場及び潜水艦停泊所
  下層:船の機関部
 また、スレーブシップの上部は透過天板であるため、光が入るようになっている。
 このように居住区画を上層に据える事で、浮上時は外での生活を感じることを可能としている。

・環境型スレーブシップ:
 めーぷるシーランドをそのまま小型化したような船である。
 地上から土や樹木、虫や鳥や獣等もいる。
 農業や生態系維持のための環境を組み込んだ船であり、光合成なども行われている。
 接続可能なスレーブシップは2つ。

・開発型スレーブシップ:
 雑多な工業品や加工食品、及び生活必需品の生産を行う。
 これまでの工場群と同様の設備が配備されており、加工機器も多い。
 また、都市船の整備技術や応急処置の講習を行っていたり、加工機器の一部レンタルもあるため
 結構出入りはあるようだ。

・研究型スレーブシップ
 通称ラボラトリィ。
 紅葉国の海洋研究のステージである。
 度重なる海洋調査のデータを元に、都市船を本拠に据えての海洋研究が行われることになり、
 この研究型スレーブシップはその本拠地となった。
 研究用の各種機材や、高等教育施設などがある。

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