今後への展望

今後への展望

以上が海底都市の説明ですが、実のところ問題がないわけではありません。
最も大きな問題は「拡張性の限界」です。

海底都市はその性質上、ドームによって居住空間を確保していく必要があります。
これはつまり、自由に生活できる空間が設計された以上には伸びない、設計するまでは増えないという事を指しています。
この問題は人口が級に増えるなどと言ったことが起こった際に、居住空間が足りなくなる可能性を指しています。
生活の場としての居住環境の拡張は、紅葉国において緊急の課題とされています。
これに対しては現在、藩国政府で「都市船の開発」や「拡張性の限界」といった議題で議論がされています。
しかしその一方で、共和国では海底都市という居住空間に別の視点をもって接する者もいます。
それはどのような視点でしょう。

彼らはその格別の防御生の高さに着目していました。
海底都市はその名の通り海底にあります。
そのため海中から捜索しない限り見つかることはない、という性質があります。
これは海底都市の外部に対する格別の堅固さを示していました。

これらを踏まえた上で、紅葉国では今後の発展性を睨んで、現行の問題に対処しつつ、さらなる開発事業への取り組みが成されることになるでしょう。

メープル外観

海底都市紹介番組収録後の風景

「はい、収録終了です。お疲れ様でしたー」
「お疲れ様でしたー」
 潜水艦の中で挨拶が響く。
すると早速、打ち上げはどこにしましょうかという声が聞こえ始め、いち早く仕事の終わりを迎えたスタッフががやがやと騒ぎ始める。
操縦桿を握るクルーはやれやれと苦笑しながら、時刻を確認した。
まだ夕方。打ち上げを始めるには少し早すぎる時間帯。

「あれ、どこに行くんですか?」
「ん、ちょっとな」
 気づいたのは隣のシートに座っているコパイだった。
収録中はコパイがカメラ操作を行い、こちらはずっと巡航ルートの移動に専念していた。
シートに座った女性はスタッフジャンパをばりばりとひっかきながらこちらを見た。
 一方、こちらは煙草を吸いたいのを必死に我慢しながら浮上中。
あごひげをひっかいたりして暇を潰しながら、海上に出た。
「お、今日はどうせだからこのまま観光地の居酒屋に行くか」
「あー、それいい! そうそう、そういえば人工島にこの間いい店見つけたんだ」
 後ろでは相変わらず好き勝手に話し続けている光景がある。
やれやれと男はもう一度ため息をついた後、ちょっと外の空気を吸ってくると言って、シートから離れ、外に出た。

「おー。綺麗」
 しかし、ハッチから顔を覗かせてそう言ったのはコパイの女性だった。
おまえどけよーと文句を言いつつ、その脇から抜けて艦の上に登る。
「えー、引っ張り上げてくれないんですか?」
「たわけ。自分で登れ」
「いけずです」
 ぶつくさ文句を言いながら登ってくる。
男はそれを一瞥すらせずに、周囲の景色を見た。
 そこにあるのは濃いオレンジだ。
波の高さに合わせて黄色くも輝く景色は一面果てしなく続いており、ずっと向こうにぽつんと夕日が浮かんでいる。
 疲れを知らぬ魚の群れが波間に黒い影を作る。
ボートのように突き出たのはいるかの背びれ。

 ――つまりは、
 これが、人が海に潜ることと引き替えに得られた物だった。

 そろそろ行きましょうよーという声がハッチの向こうから聞こえてくる。
男は最後にもう一度を肩をすくめると、下りていくことにした。
「おまえらも見てきたらどうだ?」
「えー、何をですかー」
 そんなやりとりを聞きながら、ぼんやりと景色を見ていた女もハッチから下りていく。
 潜水艦はしばしの間賑やかな声をこぼしてから、ハッチを閉め、再び海の中へと潜っていった。

夕焼けと海

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