バルコニーにて

夕食を片付けた後、ちょっと2階からバルコニーに出てみた。
鉢植えの植物たちの様子を見てっと。
うん、元気元気。
そのうち庭に植え替えできそうかな…それともこのままがいいかな。

「どうした?」
玄ノ丈さんが顔をだす。
「うん、ちょっと植木鉢の様子見に」
「そうか」
そのまま中にひっこみそうだったのを、引き留めた。
「もうちょっと、ここにいませんか?」
「ああ」
ドーム都市だけど、夜風はちょっと涼しい。
いちおう地上の気候に合わせているのだけれど、ドーム内は多少過ごしやすく調整されている。
あまり気候が違うとドームと地上との行き来が辛いから、多少のレベルだけどね。
「今日は割と涼しいし」
「そうだな」
「うん…家建てるときに、ここと地上で迷ったんだけど」
当時の地上は、ひどい状況だったから。
ほんとは気にいってた場所があったんだけど、建てるわけにはいかなかった。
「ここも悪くないぞ?」
微笑まれて、思わず微笑み返す。
「なら、よかったです」
喫茶店にほど近い場所。
政庁からは少し離れる形になるけど、通勤に不便なほどじゃない。

でも、ここにも変化の予定がある。
「そのうち、このドームごと海上に移動するかもって計画があるの」
まだ詳細はまるっきりの未定だけど。
それに、移動した場合のメリットデメリットも考えなきゃだし。
「移動したとして、どう状況が変わるかだな」
「うん…移動させる予算もだし、今は海底だから宇宙からの攻撃には隠蔽されてて強いって面もあるし」
「だが、閉鎖されている」
そう、このメープルはこれ以上広げようがない。
海上に移動すれば可能になるんだけど。
一方で、移動ではなく海上都市を新しく建設という方向もある。
「うん……まだまだ検討段階だけどね」
この国の大きな課題のひとつ。
他にもあるけど、どれも考えていかなくちゃ。

話すつもりのことから話題がずれちゃった。
「今度、地上に行ってみませんか?」
「どこへ?」
うふふ、実はネタがあったりする。
「んと、地上を落ち着かせるのと同時進行で、リゾートホテルの計画があるの」
ほんとはホテルだけの計画だったのだけれど
地上部がひどいことになったので、復興計画と合同に変更された計画。
「ああ、やってるようだな」
「うん、それでね。完成したら、一度宿泊してみませんか?」
ホテルの計画時はいろいろ意見出していたから、どう完成したのか一度見てみたい。
ドーム外の風景としてではなく、青い海の景色を満喫したい。
なにより、久しぶりに地上の様子をゆっくりながめてみたい。
「わかった。いつにする?」
「あいてる時期があったら、いつでも」
案外オープン直後は狙えるのかな?
それとも、落ち着くまでは無理なのか…ううん、まだ客足読めない。
このあたりは、休暇の件も含めて藩王に相談なのかも。

「あ、でも…その間この子らどうしようか」
鉢植えたち、この気候で放置してたらあっという間に土が乾きそう。
「一晩くらいは大丈夫なようにしておけないか?」
「うーん、水の具合とか調整する工夫あったと思うから、調べておきます」
「そうだな」
ママにたずねてもいいし、
わからなかったら、植木鉢だから庭に並べて誰かにお世話お願いするって手もある。
「まだまだ増やしたいし」
「ベランダが花畑になりそうだ」
「ええと…嫌いですか?」
このあたりのことは話してなかった。
うう、でも一度育ててみたかったの…どうしよう。
「いや?」
「よかった…」
だったら、今話してしまってもいいかな。
「今度、庭を広くして、いろいろ植えてみたいなって」
「そうか」
「うん。今はその練習もあって、鉢植え育ててるの」
庭なら木も植えてみたいかな。
あと、鉢植えに向かないものも、育てられる…ああもう、すでにやる気だ私っ。
「ここの気候考えなきゃだから、ちょっと難しいけどね」
「ジャングルにはするなよ」
「しませんー」
なんか笑われてるし。
ちょっとくやしいので、ぎゅーしちゃう。
「どうした?」
抱きしめかえしながら、たずねられた。
「うん……玄ノ丈さんがそばにいて、うれしいなって」
お互い、家を空けてしまうことが多いけれど。
帰ってくる場所は2人同じ場所。
それが、とってもうれしいから。

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